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ちゅうカラぶろぐ


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たまたま先日「本を6冊以上積読している人は年間どれくらい金銭的損失をしている?」みたいな記事が回ってきたのですが、積読を金銭的損失で語ってしまうセンスがどうとかいうのもあるのですが、それより何よりたかだか6冊程度で積読とかいう?みたいなところが引っかかってしまいどうしたものか(笑)
 特にコスパとかタイパとかを重視する記事になると、時折全く自分とは感覚も感性も交わらない物を見かける時がありますね。

 こんばんは、小島@監督です。
 で?私は今どれくらい積んでいるのかって?HAHAHA!それは言いっこ無しさ!

 さて、今回の映画は「フェラーリ」です。

 1957年、イタリアの自動車メーカー・フェラーリの創始者エンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)は窮地に立たされていた。オートレースの世界で好成績を残し名声を上げるも、自動車製造は小規模での手工業ゆえに販売数は伸びず経営は火の車。前年に最愛の息子アルフレードが病没したことで妻ラウラ(ペネロペ・クルス)との仲も冷え切り、愛人リナ(シャイリーン・ウッドリィ)と隠し子であるピエロと過ごす時間だけが僅かな慰めだったが、関係を隠している以上ピエロを認知することも叶わずにいた。大手企業による買収の噂も囁かれる中、エンツォは再起を懸けてイタリア全土を駆ける公道レース「ミッレミリア」への挑戦を決意する。

 それは、モータースポーツが今より遥かに危険だった時代。
 「ヒート」「コラテラル」などで知られるハードボイルド・ドラマの名手マイケル・マン監督。80歳を過ぎてもその手腕は衰えない彼の最新作は、自動車産業のレジェンド・エンツォ・フェラーリの伝記映画です。1980年代に同氏が手掛けたドラマ「特捜刑事マイアミ・バイス」で主人公ソニー・クロケット刑事の愛車としてフェラーリ365デイトナ・スパイダーをチョイスしたり、自身も複数台のフェラーリを所有するなど生粋のファンとも言えるマイケル・マンがエンツォ・フェラーリを主人公にした映画を監督するのはまさに適材適所と言えるでしょう。しかし骨太なドラマを描くマン監督が描くのは栄光に輝く瞬間ではなく、ある意味でフェラーリで最も「何もかもが上手く行ってなかった時期」とも言える1957年の、更にその内の数ヶ月間です。付け加えるとマイケル・マンが製作総指揮を務めジェームズ・マンゴールドが監督を担った2019年製作の「フォードvsフェラーリ」の時代背景は1963〜64年。今作からはもう少し先の話になります。
 
 マイケル・マン監督のいぶし銀で重厚なテリングの妙が全編で熾火のように光り続けるこの作品、ただその熱量に身を任せて楽しむだけでもじゅうぶん面白い作品ですが、やはりある程度の予備知識はあった方が良いでしょう。エンツォとラウラ夫婦、映画冒頭から2人に陰を落とす前年に病没した息子アルフレード、彼はエンジニアとして確かな資質を持っており病床で残したアイディアを元にして作られたと言われているのがアルフレードの愛称ディーノの名を冠した名車「ディーノ206/246」です。それほどに愛した息子が死んだ翌年、失意を隠せぬままに危機に陥る公と私に向き合うことになります。

 個としての苦悩が滲み出る家庭人としてのドラマと、レーサーが事故死しても眉ひとつ動かさない公人としてのドラマを二本軸にして進む今作、一見では誰か分からないくらいの老けメイクでエンツォを演じるアダム・ドライバーと、ちょっとヒステリックに見えながら冷徹な計算のもとに動くラウラを演じるペネロペ・クルス両者の火花散るような演技がひたすらに素晴らしいです。
 そしてもちろんモータースポーツを描く物語ですし、レースシーンの迫力も見事です。さすがに動態保存されてるものは一台で何億もするので大半はレプリカだそうですがそれでもクラシックカーが疾駆躍動する映像は観てて結構アガります。

 創造の情熱と狂騒に取り憑かれ今なお続く栄華の礎を築くことになる男の苦悩と前進、刹那的でギラついたドラマを全身で浴びたい人には打ってつけの一本。真夏に敢えて辛いものを食べに行くような心持ちで、どうぞ。

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