いよいよアニメも最終局面に向かおうとしている「鬼滅の刃」、無限城編は劇場版3部作での公開となることが発表されました。いやそれ自体は良いのですが、原作のボリュームと密度的に3部作で足りるのか?という疑問が。ひょっとすると無限城編の後に最終章が前後編で劇場公開くらいはやるかもしれない。
こんばんは、小島@監督です。
ま、もちろんここまで来たら全部観に行きますけどね!何部作になろうがどんとこいだ!
さて、今回の映画は「ルックバック」です。
東北の小学校で、藤野(声・河合優実)は学年新聞に4コマ漫画を描いて生徒たちから人気を博していた。ある時担任から不登校の京本(声・吉田美月喜)も漫画を描いているので4コマの枠を一つ分けても良いかと提案される。二つ返事で了承する藤野だったが後日学年新聞に掲載された京本の作品に愕然とする。自分よりも絵の上手い者がいることが許せない藤野は猛然と絵の勉強を始めるようになるが、一向に埋まらない京本との差の前に6年生の時に遂に筆を折ってしまう。卒業式の日、担任の頼みを断り切れず藤野は京本の家へ卒業証書を届けに行く。そこで2人は初めて顔を合わせることになるのだった。
原作に向き合うとは、決して寄り添うことだけではない。強くリスペクトするが故に正面切って対峙する道もある。原作は「チェンソーマン」で知られる藤本タツキ氏が2021年に発表されるやSNSでトレンド入りした中編読切。それを「電脳コイル」の中核アニメーターでもあった押山清高が監督・脚本・キャラクターデザインに絵コンテ・作画監督・原画までをこなし、作品と真っ向勝負してアニメでしか成し得ない映像でもって映画を作り上げました。
出会いをきっかけにライバルから唯一無二のソウルメイトとなる藤野と京本の、漫画に懸けた青春と、絶望の先にある希望が描かれます。名前からして2人とも作者の一部分が投影された人物でもあるのでしょう。登場人物が抱く複雑な感情の源泉には作者の原体験があるのかもしれません。
とにかく目を引くのが徹底して手書きの描線を活かした映像です。描く人の物語である原作を、生半可なことでは映像化はできないと腹をくくったのかただひたすらに描き上げることで応えています。基本的には原作を大きく追加も省略もしていない忠実な作りで、やっていることは一コマ一コマの解像度を極限まで上げ動きをつけ声や音を乗せて映画として紡ぐ、最も地味で最も難しい道を決然と進んでいることにこの映画の凄みがあります。
動きに感情が乗った時の所作、停滞している時の手癖、走り出すような大きなアクションだけでなく些細な動きの中でさえアニメーションのダイナミズムが宿り、そこに河合優実、吉田美月喜主演2人の誠実な演技とharuka nakamuraの手によるリリカルな音楽が加わり映画の格を一段も二段も上げています。
終盤に差し掛かり、恐らくは幾重にも意味を包含した「ルックバック」というタイトルに託されたものに気づく頃にはこの映画は観る者にとって忘れ得ぬ映像体験になっていることでしょう。ここには創作に携わる者の喜び、痛み、悲しみ、全てが凝縮されています。今もクリエイティブに身を置く人だけでなく、かつて挫折したことがある人にもきっと届くことでしょう。そして藤野と京本のように、あるいはこの原作をアニメ化しようとした押山監督ら製作陣のように、この映画もまた、きっとこれから先にこれを観た誰かが追いかける背中になるはずです。
上映時間の中編に対してどこで観ても割引不可の1,700円固定という完全にコアなファン向けの強気の価格設定をしていますが、作品の持つ密度の高さは2時間の映画にいささかも引けを取りません。間違い無く今年を代表する一本足り得る作品です。
それにしても「ウマ娘新時代の扉」と言い手書きのダイナミズムを堪能できるアニメーション映画の秀作が同時期に複数公開されている驚きと喜びよ。日本のアニメはまだまだやれそうです。
こんばんは、小島@監督です。
ま、もちろんここまで来たら全部観に行きますけどね!何部作になろうがどんとこいだ!
さて、今回の映画は「ルックバック」です。
東北の小学校で、藤野(声・河合優実)は学年新聞に4コマ漫画を描いて生徒たちから人気を博していた。ある時担任から不登校の京本(声・吉田美月喜)も漫画を描いているので4コマの枠を一つ分けても良いかと提案される。二つ返事で了承する藤野だったが後日学年新聞に掲載された京本の作品に愕然とする。自分よりも絵の上手い者がいることが許せない藤野は猛然と絵の勉強を始めるようになるが、一向に埋まらない京本との差の前に6年生の時に遂に筆を折ってしまう。卒業式の日、担任の頼みを断り切れず藤野は京本の家へ卒業証書を届けに行く。そこで2人は初めて顔を合わせることになるのだった。
原作に向き合うとは、決して寄り添うことだけではない。強くリスペクトするが故に正面切って対峙する道もある。原作は「チェンソーマン」で知られる藤本タツキ氏が2021年に発表されるやSNSでトレンド入りした中編読切。それを「電脳コイル」の中核アニメーターでもあった押山清高が監督・脚本・キャラクターデザインに絵コンテ・作画監督・原画までをこなし、作品と真っ向勝負してアニメでしか成し得ない映像でもって映画を作り上げました。
出会いをきっかけにライバルから唯一無二のソウルメイトとなる藤野と京本の、漫画に懸けた青春と、絶望の先にある希望が描かれます。名前からして2人とも作者の一部分が投影された人物でもあるのでしょう。登場人物が抱く複雑な感情の源泉には作者の原体験があるのかもしれません。
とにかく目を引くのが徹底して手書きの描線を活かした映像です。描く人の物語である原作を、生半可なことでは映像化はできないと腹をくくったのかただひたすらに描き上げることで応えています。基本的には原作を大きく追加も省略もしていない忠実な作りで、やっていることは一コマ一コマの解像度を極限まで上げ動きをつけ声や音を乗せて映画として紡ぐ、最も地味で最も難しい道を決然と進んでいることにこの映画の凄みがあります。
動きに感情が乗った時の所作、停滞している時の手癖、走り出すような大きなアクションだけでなく些細な動きの中でさえアニメーションのダイナミズムが宿り、そこに河合優実、吉田美月喜主演2人の誠実な演技とharuka nakamuraの手によるリリカルな音楽が加わり映画の格を一段も二段も上げています。
終盤に差し掛かり、恐らくは幾重にも意味を包含した「ルックバック」というタイトルに託されたものに気づく頃にはこの映画は観る者にとって忘れ得ぬ映像体験になっていることでしょう。ここには創作に携わる者の喜び、痛み、悲しみ、全てが凝縮されています。今もクリエイティブに身を置く人だけでなく、かつて挫折したことがある人にもきっと届くことでしょう。そして藤野と京本のように、あるいはこの原作をアニメ化しようとした押山監督ら製作陣のように、この映画もまた、きっとこれから先にこれを観た誰かが追いかける背中になるはずです。
上映時間の中編に対してどこで観ても割引不可の1,700円固定という完全にコアなファン向けの強気の価格設定をしていますが、作品の持つ密度の高さは2時間の映画にいささかも引けを取りません。間違い無く今年を代表する一本足り得る作品です。
それにしても「ウマ娘新時代の扉」と言い手書きのダイナミズムを堪能できるアニメーション映画の秀作が同時期に複数公開されている驚きと喜びよ。日本のアニメはまだまだやれそうです。
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