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ちゅうカラぶろぐ


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先週CDと配信がリリースされた「アイドルマスター」シリーズ15周年記念曲「なんどでも笑おう」が記念曲に相応しい名曲でつい何度もリピートしてしまいます。
 この曲に乗せて展開する15周年記念PVも絶品。マジで涙目。


 こんばんは、小島@監督です。
 来年2月の開催が告知されたバンダイナムコフェスではきっとこの歌も披露されるはず。またアイマスに限らず多くのファンにとっても約1年ぶりのライブになるかもしれず、何としても現地に乗り込みたいですね。

 さて、今回の映画は「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」です。

 C.H.郵便社で代筆業を勤めるヴァイオレット・エヴァーガーデン(声・石川由依)は、かつて戦場で、誰より大切な人であったギルベルト・ブーゲンビリア少佐(声・浪川大輔)から別れの際に聞かされた言葉の意味を理解できぬままに生きてきたが、代筆業を営む中で人の心の機微を学びその真意を探る日々を過ごしていた。
 ヴァイオレットはギルベルトの母の月命日に彼の代わりを担うかのように花を手向けに訪れていた。そこでギルベルトの兄ディートフリート(声・木内秀信)と再会する。戦後数年の時を経てもその消息の掴めないギルベルトをもう忘れるべきだとディートフリートに訴えられるがヴァイオレットはそれを拒んだ。
 そんな折、ヴァイオレットの元にユリス(声・水橋かおり)と名乗る少年から代筆の依頼が入り、ヴァイオレットはその少年の元へと赴く。一方、C.H.郵便社では社長のクラウディア・ホッジンス(声・子安武人)が郵便物の保管庫で宛先不明で戻されてきた1通の手紙を発見するのだった…

 暁佳奈の小説を原作に2018年に製作されたTVシリーズの完結編に当たるエピソードであり、同時に昨年7月の火災事件で多数の死傷者を出した京都アニメーションの再建後第1作となる映画です。当初1月公開の予定だったと聞きますが、2度の延期を経て先週ようやく封切りとなりました。丁度公開2日目となる先週19日から映画館の席数制限が解除となり、私が鑑賞した回も7割以上の客入りになっており、ようやくこういう光景が戻ってきたかと感慨深い気持ちになりました。

 渾身、と言っていい出来栄えの映画です。髪の毛1本、僅かな所作一つとておろそかにしない繊細なビジュアル、出演している声優陣の熱のこもった演技、時に荘厳に、時にリリカルに奏でられる音楽、それら全てが相乗して観客の感情に訴えてきます。TVシリーズを観ていない私でもボロボロ涙が出てくるほど響いてくるくらいだったので思い入れの強い方にとっては尚更揺さぶられるものがあったでしょう。「京都アニメーションはこういう作品を作ってくれるところだった」と思い出させてくれるに十分です。

 想いを代筆し、人と人との心をつなぎながら「心」への理解を深めていくヴァイオレットの姿は、SNSを始めとした伝達ツールが発達しながらむしろ拒絶や断絶が広がっていったり、コロナ禍でこれまでと同じような人との接し方さえままならない昨今にあっては示唆するものが多いことでしょう。奇しくも昨年発売され世界的にも高い評価を得たゲーム「デス・ストランディング」が同じように隔絶された人々を繋ぐ配達人の物語であったこととも相似した印象を受けます。また期せずして、というべきでしょうか、京都アニメーションの再出発となる作品がこういう物語をしていることにどこか運命的なものを感じずにはいられません。

 映画とは、本来ならばその作品で見せている、語られているものが全てであり、完成に至るまでの背景が作品の評価に直結するべきではないと思っています。しかし「完成して世に出たこと自体が一つの奇跡」であることを私を含めこの作品を見に足を運ぶ観客の大半が知っている今回に限っては例外にならざるを得ないでしょう。恐らくこの作品がフラットに評価されるようになるにはあと5年か10年か、事件のことを知らない人が知らないまま観るようになる日が来るまで待たねばならないと思われます。ですがこの想い、この感覚を居合わせた観客たちと共有できるのもまた今だけのもの。TVシリーズを見たかどうかなど関係無くあの事件に衝撃を受けた方ならばどうか、この新たな旅立ちの物語を映画館で見届けてほしいと思いますね。

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アップした後しばらくするまで気づきませんでしたが、前回で通算450回を超えてました。書きも書いたり、いよいよ500の大台が見えてきました。ここまで続けられるとは、自分でも結構驚いています。

 こんばんは、小島@監督です。
 そんなこんなですが、皆さんこれからもよろしくお願いします。

 さて、今回の映画は「事故物件 恐い間取り」です。

 芸人・山野ヤマメ(亀梨和也)は中井大佐(瀬戸康史)と共にお笑いコンビ「ジョナサンズ」を組んでいたが10年経っても芽が出ず、限界を感じた中井からコンビ解散を切り出された。突然ピン芸人となり途方に暮れるヤマメに番組プロデューサーの松尾(木下ほうか)は心霊バラエティー番組への出演を条件に、かつて殺人事件が起きた部屋、即ち「事故物件」に住むことを要求する。ヤマメは逡巡するものの、芸人として名を売るラストチャンスともいえるその申し出を受けることにしたのだった。

 メ~テレの持つCSチャンネル・エンタメ~テレにて2011年より不定期に製作されている「北野誠のおまえら行くな。」での企画の一つとして事故物件に住み始めたのをきっかけに企画終了後も「事故物件住みます芸人」として数々の事故物件に住むほか全国各地の心霊スポットを探訪し動画配信したりトークライブを行う芸人・松原タニシ。その彼がこれまで歴訪した物件を間取り図付きで紹介し2018年に上梓した「事故物件怪談 恐い間取り」を原作にしたホラー映画です。作品の出自や亀梨和也がホラー初主演する話題性や、ハリウッド大作の新作が延期続きだったりようやく映画館の席数制限も緩和されそうだったりということも手伝ってか封切りから2週連続で観客動員数のトップを走っています。監督は「女優霊」「リング」など1990年代から邦画ホラーを牽引し続け今年もドラマ「恐怖新聞」を手掛ける中田秀夫が務めています。
 作中4つの物件が登場しますが、内3つは原作にも登場するものである上、更にその内の1つは実際にその場所をロケ地として撮影されたそうです。
 
 この映画、主人公が芸人だからなのかちょっとユニークな肌触りをしています。恐怖の対象に踏み込む要因が功名心からというのはまだともかく、特に序盤から中盤は「生活が懸かっているので何か起きてくれないとマジで困る」という状況が出来上がっているのが他のホラーにはあまり見られない面白さがあります。事故物件を題材に取った映画としては2016年に「残穢」という作品がありましたが、そうなった原因をどこまでも深堀していこうとした「残穢」とは対照的に「怪奇現象が起こるかどうか」自体が興味の対象で特にその原因を深く追求したりはしないのも特徴と言えるでしょう。

 芸人というには素朴な性格をしている主人公ヤマメと、野心はあれど際どい局面では友情が先に立ってしまう相方の中井、「ジョナサンズ」の数少ないファンでTV局で再会したのをきっかけに親交を深め、結果なし崩し的に巻き込まれることになる女性・梓(奈緒)という何だか又吉直樹の小説を思わせるような3人の関係性の描写も悪くなく、そのフィルモグラフィーから中田秀夫監督はどうしても作品がホラーに偏りがちですが実はそういう要素の無い人間ドラマも作ってみたいんじゃないかという気もします。

 一方でエンタメ性を強調したいのか怪奇描写がかなり率直に過ぎる傾向があることや、作中各所に松竹芸能の芸人が続々と登場するのも相まってかなりカラッとした作風になっており、ホラー映画としてはかなり薄味と言わざるを得ません。実のところ芸人が一人くらい壊れようが気にも留めない番組プロデューサーとかヤマメに事故物件を紹介する不動産屋の女性営業・横水(演じる江口のりこの怪演も必見)の方がよほど怖いくらいです。終盤ヤマメが4つ目に訪れる物件で起こるクライマックスはある意味でその最たるものでここではもう完全に怖さより面白の方が先に立ってしまっています。

 しかしこの詰めの甘い、ハードルの下を易々とくぐってしまうどちらかと言えばボンクラ映画の類に入ってしまうような作品ではありますが、私、何だかんだかなり楽しめてしまいました。割と好きかもしれません、コレ。鑑賞後に話のネタにしやすい気やすさもあり、9月に入ってもまだ暑い日が続く中で一時涼むにはこれくらいの軽さが丁度いいようにも思います。ご興味のある方はどうぞ。
 
 
 

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先週「今帰宅困難者状態です」とブログに書きましたが、その後結局電車の運行再開が23時過ぎる状況だったため帰宅は断念してホテルに泊まることに。最近の宿泊事情は伝え聞いてはいたのですが、実際利用してみるとその状況を実感します。何せ22時過ぎに宿を探し始めて15分と経たずに部屋が見つかった上にオープンして5年も経ってないようなビジネスホテルでも4,000円しないとかカプセルホテルとさして変わらない価格で泊まれるとは。しかもGoToトラベルが使えるとのことで何割かは国が持ってもらえる感じに。

 こんばんは、小島@監督です。
 とは言えやっぱり自宅の方が落ち着く(笑)

 さて、今回の映画は「海辺の映画館 キネマの玉手箱」です。

 広島県尾道市。海辺にたたずむ映画館「瀬戸内シネマ」が閉館の日を迎えようとしていた。最後の企画であるオールナイトでの「日本の戦争映画特集」上映のさなか、劇場を包んだ雷光と共に毬夫(厚木拓郎)、鳳介(細山田隆人)、茂(細田善彦)の3人は映画の世界へとトリップしてしまう。3人は映画の世界を彷徨いながら自分たちと同じように映画の世界に取り込まれた少女・希子(吉田玲)を救おうと奔走するが…

 今年4月10日に世を去った映画監督・大林宣彦。彼の最後の作品は奇しくもそれと同じ日に公開予定でしたがコロナ禍により夏にずれ込む形となりました。ようやく公開されたその作品は、まさに巨匠のラストメッセージとも言うべき作品に仕上がっていました。
 
 大林宣彦監督は初めての長編作品であった「HOUSE」(1977年)からずっと既存の枠に囚われない自由な作風の方でしたが、最後の作品でもあるこの「海辺の映画館」もその奔放さにまず驚かされます。戦争映画と共に映画の歴史と近現代の戦争を紐解く、というような形は見せているものの映画の定石なんて完全に無視。時にモノクロ、時にサイレント、時にミュージカル、語り口そのもののスタイルもポンポン変わる上にホイホイ観客に向けても語り掛けるので時間も空間も次元さえも無秩序。時系列さえバラバラ。ジャンルによるカテゴライズなど最早無意味。いや確かにタイトルには「玉手箱」とありますけれども!大林宣彦監督はそういうワンダーランドな映画を作っちゃう人、という予備知識が無いとこんな常識の通用しない作品は開始5分と経たずに置いてきぼりにされてそのまま追いつけずに終わってしまう方もいるはずです。
 夢や記憶というのは時に時間的な順序では並ばず印象の強さで並んでいたりするもの。とすればこの映画は大林宣彦監督の映画的記憶を物語や時間的な整合性を無視してダイレクトに映像化したもの、とも取れるでしょう。

 ではただ過去だけを回顧するための作品かと言えばそうではありません。これほど奔放な作品でありながらこの映画が伝えようとするメッセージはとてもシンプルで、それ故に力強いものです。映画で描かれる戦争を通して実際の戦争のありようを考察し、それを以て明確な「反戦」のメッセージを打ち出し、開幕はただ無秩序にしか見えないこの映画に、実は激情によって支えられた1本の強い柱があることに気づかされます。例え虚構を通しても過去を変えることはできないが、虚構を以て過去を知り得たことで未来を変えるための力へと変えてほしい、そんな祈りのようなものを感じます。ある意味で、これが大林宣彦監督の映画というものへの愛の形なのでしょう。

 そのエッジの効きすぎた作風を別にして、この映画唯一にして最大の欠点はその熱量さながらに長い上映時間です。実に179分。巨匠が刻み込んだ異様ともいえる熱量を約3時間浴び続けることになるのでま~疲れます。ぶっちゃけ途中で眠くもなりました(苦笑)それでもその熱さが比類ない映像体験を観る者にもたらしてもくれるのです。
 製作中は同時に闘病中だったと聞きます。後付けでなく、たとえ存命中にこの映画を観れたとしても「この人はこれで最後にするつもりなんだ」と予感めいたものを感じ取ったことでしょう。文字通り命を削って生まれたこの作品は、大林宣彦監督の「集大成」であり「走馬灯」であり、そして「遺言」とも言うべき映画です。長いわ自由過ぎるわで観易いタイプの作品ではないですが、それでも多くの方に観て頂きたい一本ですね。

 
 
 

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コレを書いているまさに今、私、帰宅困難者の真っ最中!「所により雷を伴う強い雨」と天気予報では言ってましたが自分の通勤経路にストライクでしたわよ(苦笑)

 こんばんは、小島@監督です。
 今日を無事に乗り切れるのか、事件はリアルタイムで起こっている。

 さて、今回の映画は「真夏の夜のジャズ 4K」です。

 1958年夏、アメリカ、ロードアイランド州ニューポート。街は熱気と狂騒に包まれ始めていた。全米各所から人が集まり、移動遊園地が営業を始める。野外ステージの前には大量の座席が並べられ来場者の訪れを待つ。そしてジミー・ジュフリー・スリーの「トレイン・アンド・ザ・リバー」がフェスの始まりを告げた。

 1954年に初開催されたニューポート・ジャズフェスティバルは何度か中止の憂き目に(コロナ禍の影響を受けて今年も中止になった)あったことはあれど現在に至るまで続けられ、ジャズフェスの代名詞ともいえる存在です。また多くの演奏がラジオやTVで中継されたりするのと同時に録音もされ、後にレコードやCD化されてリリースされたりもしてきました。そんなジャズフェスの1958年開催の模様を撮影しドキュメンタリー映画として製作され1960年に公開されたのがこの「真夏の夜のジャズ」です。音楽映画の一つの金字塔としてミニシアターなどで度々リバイバル上映されるタイトルでもありますが、公開から60周年という今年4Kリマスター版が製作され現在全国公開されています。

 まず何より伝説的ともいえるミュージシャンたちのプレイを楽しめるのが最大のポイントです。「ジャズの父」とまで言われたルイ・アームストロング、カリスマ的な即興演奏のスタイルで魅せるセロニアス・モンク、ハスキー・ヴォイスと独特の歌唱法でスターとなったアニタ・オデイ、ギターリフを駆使したスタイルを確立させ「ロックの創始者」と言われたチャック・ベリーなどが次々と登場しそのパフォーマンスで楽しませてくれます。映画には登場していませんがこの年のニューポート・ジャズフェスティバルにはモダンジャズを代表する名サックスプレイヤーであったジョン・コルトレーンも出演していたそうで、一線級が勢揃いしていたんですね。

 この映画を特徴づけるもう一つの要素、それはステージ以外の映像にあります。かなり観客を写したショットが多く1950年代後半のファッションを楽しめるほか、同時期にニューポートで開催されていたヨットレース、「アメリカズカップ」の様子も収録されています。音楽とスポーツ、人々を熱狂させる2つが同時期に開催されていたニューポート、それはもう熱かったことでしょう。
 また一方で、出演者の顔ぶれに対して観客の方は黒人の方の比率が少ないことが分かります。いわゆる「公民権運動」が盛んになるまでにはもう数年の時間が必要で、そうなる前の様子をわずかながら見て取ることができます。

 そのショットやどこかMVっぽさもかんじさせる編集まで含めてとにかくクールでカッコいいこの映画を撮影・監督したのはバート・スターン。当時は新進気鋭の写真家で、後年エリザベス・テイラーやオードリー・ヘプバーン、トルーマン・カポーティなどを撮影したことで知られ、特に死去6週間前のマリリン・モンローを撮影した写真集「The Last Sitting」が彼の名を不動のものにしました。

 83分と短い上映時間でありながら濃密な映像・音楽体験を観る者に与えてくれる、60年経っても今なお色褪せない逸品です。ジャズに興味があっても無くても是非ご覧になっていただきたい。
 ところで今年の秋は音楽映画が目白押し。ルチアーノ・パヴァロッティの生涯を綴った「太陽のテノール」、オアシス解散以後のリアム・ギャラガーを追った「アズ・イット・ワズ」、ジャズの帝王と言われたマイルウ・デイヴィスの人物像を紐解く「クールの誕生」、世界の音楽を変えたとまで言われる音楽レーベル・モータウンを考察する「メーキング・オブ・モータウン」などドキュメンタリーだけでも花盛り。片っ端から観たいぜ!しばらくブログの内容が偏ったらすいません(笑)!

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先日久しぶりにワインをブラインドテイスティングする機会があったのですが、大体の産地くらいは掴めたものの品種まではイメージが湧かない中途半端な印象に自分の感覚が鈍っているのを実感してしまいました。このコロナ禍で数か月まともに「ワインをテイスティングする」ということから離れていたツケを叩きつけられたような感じです。ちゃんと味を知る機会を作らねばなるまいて。

 こんばんは、小島@監督です。
 またいろいろ勉強し直しだな~

 さて、今回の映画は「劇場版Fate/stay night [Heaven's feel] Ⅲ spring song」です。

 少年は遂に覚悟を決めた。
 真実から目を逸らさず、一人の少女を救い、自分の選んだ正義を貫くことを決めた。
 歪みに歪んだ「第五次聖杯戦争」のさなか、兄・慎二を殺害し自身の犯した罪に溺れ体を黒く染め上げた間桐桜(声・下屋則子)は、祖父・臓硯(声・津嘉山正種)の思惑をも超えて暴走してゆく。
 そんな桜を救うべく立ち上がることを決めた衛宮士郎(声・杉山紀彰)は、行動を開始する。その士郎に意外にも言峰綺麗(声・中田譲治)が助力を申し出るのだった。

 2004年に発売されたヴィジュアルノベルゲール「Fate/stay night」、3つのルートで構成されたその作品の最後のルート、間桐桜をメインヒロインとするシナリオなので「桜ルート」と通称される「Heaven's Feel」を3部作として劇場公開するプロジェクトの最終章が遂に公開です。初めて「Fate/stay night」がアニメ化されたのは2006年なので実に10年以上の時をかけて映像化が完結したことになります。
 
 3部作通して高いレベルの映像を維持している作品ですが、さすが最終章だけあって入魂の映像美で圧倒してきます。静的なシーンはどこまでも端正に、動的なシーンでは文字通り縦横無尽にキャラクターが躍動します。アニメ映画としてこの画面のハイカロリーぶりはシンプルに「売り」と言える部分で、スクリーンで味わう醍醐味に溢れていると言えるでしょう。

 物語の方も長大なシナリオの中盤~終盤のエピソードを吟味・咀嚼し構成され、クライマックスまで熱量を高めていくことに成功していて見事です。メインヒロインである桜の心情描写、その桜と凛の関係性、「第4のヒロイン」ともいうべきイリヤのクローズアップの度合い、そして衛宮士郎と言峰綺麗の相克など要所を押さえつつ、時に原作に対して更に一歩踏み込んでみせるあたりに監督須藤友徳と脚本桧山彬の作品への理解度の高さが垣間見えます。
 
 もう一つ、この映画はテンポというかリズムがとても良い。特にラスト間近に凛が桜へ向けたある質問に対し桜が応えるまでの「間」は出色で、作品の進行速度をプレイヤーが恣意的に決められるゲームにはなし得ない映像作品ならではのものと言えます。映像化に当たりちゃんと製作陣が「映画」であることを意識し続けたことが結実した瞬間でした。
 惜しむらくは本来なら3月末に公開するはずだったことで、ラストシーンの美しさはできればやっぱり春に観たかったなぁというか。おのれコロナ。

 この作品、公開日がお盆休み中だったおかげで初日を捕まえて観に行きましたが、その日は席数を半数にしているとは言え最終的に全上映回がほぼ満席となったそうで、私も久々にキャラクターTシャツを着てる人やら缶バッジやストラップをいくつもデイパックに装着してる人を見かけました。映画界隈も厳しい話の多い昨今でしたが久しぶりの明るいニュースだったように思えます。これに続く作品が増えてくるようになると嬉しいですね。
 

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日本を始めアジア圏ではまだ劇場公開の余地が残されているそうですが、再三の公開延期を受けてディズニーの「ムーラン」が遂に劇場上映を取りやめ公式配信サービス「Disney+」での独占配信に切り替えた、という報を先日聞きました。ディズニーからのコメントでは言及はされていませんでしたが最近の米中関係の急速な悪化も無視できない要因ではあったでしょう。しかしこれで配信での収益がそれなりの数字を出してしまう(またその可能性は十分にある)と、これまで以上にハリウッドメジャーは配信重視の方針に追従してしまいそうな懸念があります。既に今、ハリウッド大作の新作映画がここ数か月まるで入ってきていない状態ですし、映画の在り方そのものが変わりつつあるような気がします。

 こんばんは、小島@監督です。
 でもできれば大作映画は映画館の大きなスクリーンで観たい。迫力が段違いですし。

 さて、今回の映画は「ドラえもん のび太の新恐竜」です。

 のび太(声・大原めぐみ)は恐竜博の化石発掘体験で卵型の化石を見つけた。それを恐竜の卵と信じるのび太はドラえもん(声・水田わさび)に頼み込んで「タイムふろしき」を出してもらい化石の時間を戻しにかかる。翌朝その化石はのび太の期待通りに卵となり、中から双子の恐竜が誕生した。前肢に羽毛を持つその恐竜はドラえもんが持つ22世紀の百科事典にも記載が無く新種の恐竜である可能性を秘めていた。のび太は双子の恐竜にキュー(声・遠藤綾)とミュー(声・釘宮理恵)と名付け育てることにする。
 育て始めてからしばらくしたある日、のび太はミューが滑空するところを目撃する。この恐竜は空を飛べる!しかも体格も日に日に大きくなってきている。2匹を現代で育てることに限界が来たことを悟ったのび太はドラえもんやジャイアン(声・木村昴)たちの協力を得て、2匹を白亜紀の世界へ帰すことを決心するのだった。

 ドラえもん誕生50周年と劇場映画通算40作目を記念して作られたのは、第1作目「のび太の恐竜」を発展的にリメイクした1本です。「のび太の恐竜」は声優陣やスタッフが刷新されてすぐの2006年にも一度リメイクされていますが、基本原作に忠実なスタンスで作られていた2006年版と違い今回の「新恐竜」は「卵の化石から恐竜が孵ってしまい白亜紀の世界へ戻しに行く」という基本プロットのみを踏襲し新しい物語を作り上げています。その土台となるものは「のび太の恐竜」が作られた1980年からのこの40年間で進められてきた恐竜や古生物学の新たな知見と、原作者藤子・F・不二雄への多大なリスペクトです。
 登場する恐竜はフタバスズキリュウのピー助から滑空できる新種の羽毛恐竜へ。さらにミューと比較してキューの方は体格も小さく尻尾も短い、飛べないというハンディキャップを有しておりその成長がのび太の成長ともシンクロする構成となっています。
 中盤から登場するタイムパトロール隊が藤子・F・不二雄のコミック「T・Pぼん」で登場するチェックカードを使うシーンが出てきたり、思いもかけないキャラクターをカメオ出演させたりするギミックも楽しいですね。

 原作ではのび太たちの行く手を遮る敵として恐竜ハンターが中盤から登場していましたが今作ではその存在が匂わされる程度で登場はせず、代わってクライマックスを盛り上げるのは近年発見が相次ぎ研究が進められるアズダルコ科と思しき肉食の巨大翼竜(シルエットが一瞬現れるだけの初登場シーンがモンスター映画を思わせて実に秀逸)襲来と、恐竜を絶滅させるに至るカタストロフ「巨大隕石衝突」です。ここでキューの持つハンディキャップが大きな意味を持つ構成も見事と言えるでしょう。

 のび太が昭和的な根性論に走りすぎのきらいがあるのが難点ではありますが、「のび太の新恐竜」は物語を構成する様々な要素が巧く絡み合い、藤子・F・不二雄のいう「SF(すこしふしぎ)」マインドを存分に楽しめる快作に仕上がっています。
 本来なら例年通り3月に公開され春休みを彩るタイトルの一つになるはずでしたが、延期となりようやく先日8月7日(実はのび太の誕生日でもある)に封切られました。サマーシーズンにドラえもん映画が公開されるのは「STAND BY MEドラえもん」以来5年ぶり。これを系譜に含めないとするなら1981年に公開された「ぼく桃太郎のなんなのさ」以来39年ぶりになります。コロナ禍による際どい状況が続きハリウッドメジャーの新作も続々延期されて公開の目途も立たない作品が相次ぐ、映画産業にかつてない逆風が吹く中で、恐らくこの「のび太の新恐竜」が背負うものもこれまでにない重さであることでしょう。ファミリー層を中心としたメインストリームへ訴求する映画の今後を占う作品として切実に売れてほしいと願っています。

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先週このブログで熱中症にかかってしまったと書きましたが、実はその後が大変でした。一旦は引いた熱が再発した上に顔の一部が赤く腫れあがって一度は左目が半分ほどしか開かないほどに。医師の診察を受けたら、皮膚表面の傷に溶連菌や連鎖球菌が入り込んで高熱と共に患部に腫れが出る「丹毒」という病気と診断されました。
 で、今もなお抗生剤を処方されてる真っ只中でございます。見事に効いてくれたのでありがたい限り。週の後半から出勤できるようにもなりました。

 こんばんは、小島@監督です。
 いや~何にしてもえらい目に遭いましたわ…(苦笑)

 さて、今回の映画は「遊星からの物体X」です。

 南極、アメリカ南極観測隊第4基地。そこへ1匹の犬を追ってノルウェー観測隊のヘリが現れた。執拗に犬を狙うが失敗し、手違いからヘリも爆発。それでも攻撃を止めようとしないノルウェー観測隊の銃がアメリカ基地の隊員を負傷させたため隊長ギャリー(ドナルド・モファット)が射殺した。
 ノルウェー観測隊に何が起きたのか探るためヘリ操縦士のマクレディ(カート・ラッセル)らはノルウェー基地へ向かう。そこで彼らが見たのは焼失した建物や何かを取り出したと思しき氷塊、そしておぞましいまでに異様な形に変形し固まった焼死体であった。 
 異変はアメリカ基地でも起き始めていた。収容された犬の体が変形しグロテスクな姿へ変異して犬小屋の他の犬を襲い始めたのだ…

 ジョン・W・キャンベルの短編小説「影が行く」を原作に1982年に製作されたSFホラーです。1951年にもこの小説を原作にした「遊星よりの物体X」という映画がありましたがそれのリメイクというより原作小説のより忠実な映像化というのが近いようです。監督は「ハロウィン」シリーズや「エスケープ・フロム・LA」などを手掛けたジョン・カーペンター。音楽は「ニュー・シネマ・パラダイス」「海の上のピアニスト」などで知られるエンニオ・モリコーネが担っています。人や犬など一部はそのままなのにそれとは似ても似つかないグロテスクな姿になる「物体」は数人の手によりデザインされたものですが、中でもロブ・ボッティン(「ハウリング」で役者を狼男に全身変装させる特殊メイクで高い評価を得たメイクアップアーティスト)の功績が大きく、後のSFXやクリーチャーデザインに多大な影響を与えました。

 ぶっちゃけこの映画、私とても大好きで今までに何回も観ていますし何ならDVDも持ってるくらいです。好き過ぎるけど人に薦めるとなるとどうもありきたりの言葉になってしまうのがもどかしいくらいです。
 公開時は「E.T.」と同時期だったらしく興行的には苦戦したと聞きますが、閉鎖空間で人間に擬態したエイリアンとの死闘や、メンバー間での疑心暗鬼を描き出すこの映画は筋立てからして魅力的。南極というロケーション、そこに数万年の昔から眠りについていた異星生物というシチュエーションなどにどこかラブクラフトの「狂気の山脈にて」を思い起こさせるところもありますね。思いもかけないタイミングで姿を現す「物体」のおぞましさと恐ろしさ、それと知恵と死力を尽くして戦う人間の勇気や意地、今観ても色褪せない凄みがあります。
 女性が全く登場しないドライさ加減も昨今にはない部分と言えるでしょう。2011年にこの映画の続編にして前日譚となる「遊星からの物体X ファーストコンタクト」が製作されましたがこちらでは数人の女性が出演しています。

 この映画、2018年に4Kデジタルリマスター版が製作され、以来各地のシネコンやミニシアターで断続的に上映が行われてきましたが、ライセンスの終了に伴う最終上映が先週8日より名古屋シネマスコーレにて始まっています。ここを逃すともう滅多にスクリーン鑑賞できる機会はなさそうですし、興味のある方はどうぞお見逃しなく。

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