先週の金曜日、休みを取っていろいろ用事を片づけたり映画を観たりしようと思ったら結構な雪が降ってきたので外出する気が失せてしまい、今季初の雪かきをしたりしてました。と言っても数センチ程度なので歩く場所の確保というより翌日以降の自宅周辺の路面凍結を避ける意味合いの方が強かったですが。凍られるとヤバいんすよ。雪かき、例年1~2回はやる羽目になるんですが、昨冬は全くやらずに済んでしまったのでそれだけ暖冬だったんだなぁと感じます。
こんばんは、小島@監督です。
やっぱり冬はちゃんと「冬」してくれないとどことなく落ち着きませんね(笑)
さて、今回の映画は「ズーム/見えない参加者」です。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けロックダウンを敢行したイギリス。ヘイリー(ヘイリー・ビショップ)と友人たちは定期的にZoomを介して会話を楽しんでいた。ある時ヘイリーはロックダウンの日々にちょっとした楽しみをと霊媒師を招いてのオンライン交霊会を実施した。メンバーはヘイリーの提案に乗りいつものノリで和気藹々と交霊の儀式を始めた。しかしその内それぞれの部屋で異変が起こり始める…
コロナ禍で映画製作も多大な制限を受けている最中ですが、そんな中にあってもその制限を強みに変えようという試みが生まれています。「ズーム/見えない参加者」はまさにロックダウンの最中に企画がスタートし、全編をZoomで撮影、作品のほとんどをリモートで製作されたそうです。映画全編がPC画面上で展開する映画と言えば同じホラーでは「アンフレンデッド」(2014年。2018年には続編も製作された)、サスペンスの「search/サーチ」(2018年)など既に先駆者がおり表現のスタイルとして定着しつつありますが、それらとの違いはひとえに「新しい方法にトライした」のではなく「使えるツールの中から今できるものを選んだ」ところにあるでしょう。このスタンスの違いは大きいです。
むしろ映像制作においてリモートワークとの相性が良いのはアニメの方で、例えば昨秋公開された「ウルフウォーカー」は作画作業の全てがリモートで製作されています。恐らく今TV放送されている作品にもこれに近い状況のものは既にあることでしょう。
単純にホラー映画として観た場合に、物語そのものは「パラノーマル・アクティビティ」(2007年。その後シリーズ化。)のようなPOVホラーの範疇を出るようなものではなく、あるいは全編PC画面上で展開する映画としても「search/サーチ」ほどに洗練されてもいないので「まぁこんなものか」と思わざるを得ない部分も大きいです。
しかし上映時間68分と短めにまとめたスマートさや、画面に特殊加工を施すアクセサリーツール、回線落ち、マイクのハウリングと言った通話アプリの機能やオンライン会話にありがちな現象をも恐怖の演出に使ってみせる手法、大掛かりなセットも使えず同じ場所に人を何人も集められない状況でどうやってコレを撮ったんだろう?というショットがいくつも登場するその創意工夫ぶりは賞賛に値します。製作がイギリスだからか、会話や展開の中になかなかきつめのブリティッシュジョークが突っ込まれている辺りにもニヤリとします。
この映画最大の欠点は、実は映画そのものではなく上映の形式にあります。本編終了後にリサーチとリハーサルを兼ねて出演者とスタッフが実際に交霊会を行ってみた際の様子が一種の特典映像として上映されるのですが、これが完全に蛇足。映画の余韻もダメにしてしまうくらいの残念さです。そんなのはソフト化された際のおまけに収録する程度にして欲しかった。
いよいよ作品の中に明確に「ロックダウン」や「COVID-19(新型コロナウイルス)」の言葉が躍る映画が登場するようになりました。ある意味で「現在」を共有できる今だからこそ観て意味のある作品だと思います。日頃ホラーは敬遠されるような方でも映画製作に携わる方たちの果敢なあがきを観てみて頂きたいと思いますね。
こんばんは、小島@監督です。
やっぱり冬はちゃんと「冬」してくれないとどことなく落ち着きませんね(笑)
さて、今回の映画は「ズーム/見えない参加者」です。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けロックダウンを敢行したイギリス。ヘイリー(ヘイリー・ビショップ)と友人たちは定期的にZoomを介して会話を楽しんでいた。ある時ヘイリーはロックダウンの日々にちょっとした楽しみをと霊媒師を招いてのオンライン交霊会を実施した。メンバーはヘイリーの提案に乗りいつものノリで和気藹々と交霊の儀式を始めた。しかしその内それぞれの部屋で異変が起こり始める…
コロナ禍で映画製作も多大な制限を受けている最中ですが、そんな中にあってもその制限を強みに変えようという試みが生まれています。「ズーム/見えない参加者」はまさにロックダウンの最中に企画がスタートし、全編をZoomで撮影、作品のほとんどをリモートで製作されたそうです。映画全編がPC画面上で展開する映画と言えば同じホラーでは「アンフレンデッド」(2014年。2018年には続編も製作された)、サスペンスの「search/サーチ」(2018年)など既に先駆者がおり表現のスタイルとして定着しつつありますが、それらとの違いはひとえに「新しい方法にトライした」のではなく「使えるツールの中から今できるものを選んだ」ところにあるでしょう。このスタンスの違いは大きいです。
むしろ映像制作においてリモートワークとの相性が良いのはアニメの方で、例えば昨秋公開された「ウルフウォーカー」は作画作業の全てがリモートで製作されています。恐らく今TV放送されている作品にもこれに近い状況のものは既にあることでしょう。
単純にホラー映画として観た場合に、物語そのものは「パラノーマル・アクティビティ」(2007年。その後シリーズ化。)のようなPOVホラーの範疇を出るようなものではなく、あるいは全編PC画面上で展開する映画としても「search/サーチ」ほどに洗練されてもいないので「まぁこんなものか」と思わざるを得ない部分も大きいです。
しかし上映時間68分と短めにまとめたスマートさや、画面に特殊加工を施すアクセサリーツール、回線落ち、マイクのハウリングと言った通話アプリの機能やオンライン会話にありがちな現象をも恐怖の演出に使ってみせる手法、大掛かりなセットも使えず同じ場所に人を何人も集められない状況でどうやってコレを撮ったんだろう?というショットがいくつも登場するその創意工夫ぶりは賞賛に値します。製作がイギリスだからか、会話や展開の中になかなかきつめのブリティッシュジョークが突っ込まれている辺りにもニヤリとします。
この映画最大の欠点は、実は映画そのものではなく上映の形式にあります。本編終了後にリサーチとリハーサルを兼ねて出演者とスタッフが実際に交霊会を行ってみた際の様子が一種の特典映像として上映されるのですが、これが完全に蛇足。映画の余韻もダメにしてしまうくらいの残念さです。そんなのはソフト化された際のおまけに収録する程度にして欲しかった。
いよいよ作品の中に明確に「ロックダウン」や「COVID-19(新型コロナウイルス)」の言葉が躍る映画が登場するようになりました。ある意味で「現在」を共有できる今だからこそ観て意味のある作品だと思います。日頃ホラーは敬遠されるような方でも映画製作に携わる方たちの果敢なあがきを観てみて頂きたいと思いますね。
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今年3月に上映される予定の「ガールズ&パンツァー最終章第3話」、新しい前売券が先ごろ発売されたのですがその特典がまたふるっています。何とキャラソンが収録された「カセットテープ」!最近はCDも珍しくなりこういうのはダウンロードコードを記載したカードになることの方が主になりつつあるこのご時世にカセットテープ!さすが妙に高年齢層への訴求力が高いガルパン!やることが一枚上手だぜ!
うっかり買っちゃたしね!
こんばんは、小島@監督です。
あとは公開日までに万策尽きてないと良いんですけどね~
さて、今回の映画は「ガメラ 大怪獣空中決戦」ドルビーシネマ版です。
太平洋上、プルトニウムを運ぶ輸送船とその護衛艦である海上保安庁の巡視船が突如出現した謎の環礁により座礁した。しかし環礁は自ら船舶から離れるような動きを見せる。保険会社の草薙直哉(小野寺昭)と海上保安庁の米森良成(伊原剛志)は黒潮に乗り徐々に日本へと近づいてくる環礁を調査し、驚くべきことにそれが巨大な生物であることを突き止める。
一方、五島列島のある島では「鳥!」という無線を残し島民が全員姿を消すという事件が発生。長崎県警の大迫力(蛍雪次郎)と、彼に依頼され調査に向かった鳥類学者の長峰真弓(中山忍)はそこで巨大な怪鳥が飛び立つところを目撃する。
後々エポックになるような作品が同時期に製作されるという現象は不思議とよくある話で、アニメ映画「攻殻機動隊」、TVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」が製作された1995年は特撮映画でも1本、後続への影響が大きい作品が登場しました。それがこの「ガメラ 大怪獣空中決戦」です。「ガメラ」シリーズ生誕55周年を記念して昨年4Kリマスターによるドルビーシネマ版が製作され、対応できる上映館での限定上映が行われました。個人的には「平成ガメラ三部作」の1作目にあたるこの作品だけ劇場で鑑賞したことが無かったのでようやく長年の希望が叶い感無量の映像体験を先日味わってきました。
1995年を舞台に2体の巨大怪獣とそれを発見した人々や自衛隊との戦いを描くこの映画、リアリティを重視して設定や世界観が構築され自衛隊の兵器などは現実に即したものが登場しています。同時期に年1本ペースで製作されていた「ゴジラ」シリーズにはメーサー車やスーパーXと言った架空の兵器が活躍しますがそれとは対照的となっています。
この映画の大きな特徴として「視点の低さ」が上げられます。怪獣を俯瞰するのではなく大半のカットは人間が怪獣を見上げる視点を貫いており、ガメラたちの巨大感だけでなくそれらが日常に入り込んできた「災害」あるいは「異物」であることを強調しています。
また、製作に当たり日本テレビとの協力を取り付けたこの映画は作中に登場するニュースのシーンを当時日本テレビの夕方のニュースを担当していた真山勇一、木村優子らがキャスターとしてニュースを読み上げていたり(収録は実際のニュース番組放送終了後にそのままスタジオとセットを利用して撮影されたそうです)、同じく日テレのアナウンサーだった大神いずみがリポーターとして出演したりしており現実の延長線上的感覚を醸成するのに一役買っています。
25年前の作品を高精細な4Kリマスターとした弊害というべきか、却って怪獣の作り物感や造形物の塗りムラみたいなものが目立ってしまったりするカットが散見されますが、今再見するならそういったシーンも味わい深いものに映るかもしれません。
むしろこの映画最大の欠点はヒロインの一人である草薙浅黄を演じる、これがデビュー作であった藤谷文子の演技でしょう。まだご覧になったことの無い方はこの1点だけはお覚悟の上でご覧になってください(笑)
興行成績では苦戦したものの作品としては高い評価を得たこの作品は、その後2本の続編が製作され三部作となり、監督金子修介、特撮監督樋口真嗣の出世作ともなりました。
また今回もこの「大怪獣空中決戦」の好評を受けて続編の「レギオン襲来」のドルビーシネマ版の上映が先日決定。せっかくだからこれも何とか時間を作って観に行きたいものよ。
うっかり買っちゃたしね!
こんばんは、小島@監督です。
あとは公開日までに万策尽きてないと良いんですけどね~
さて、今回の映画は「ガメラ 大怪獣空中決戦」ドルビーシネマ版です。
太平洋上、プルトニウムを運ぶ輸送船とその護衛艦である海上保安庁の巡視船が突如出現した謎の環礁により座礁した。しかし環礁は自ら船舶から離れるような動きを見せる。保険会社の草薙直哉(小野寺昭)と海上保安庁の米森良成(伊原剛志)は黒潮に乗り徐々に日本へと近づいてくる環礁を調査し、驚くべきことにそれが巨大な生物であることを突き止める。
一方、五島列島のある島では「鳥!」という無線を残し島民が全員姿を消すという事件が発生。長崎県警の大迫力(蛍雪次郎)と、彼に依頼され調査に向かった鳥類学者の長峰真弓(中山忍)はそこで巨大な怪鳥が飛び立つところを目撃する。
後々エポックになるような作品が同時期に製作されるという現象は不思議とよくある話で、アニメ映画「攻殻機動隊」、TVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」が製作された1995年は特撮映画でも1本、後続への影響が大きい作品が登場しました。それがこの「ガメラ 大怪獣空中決戦」です。「ガメラ」シリーズ生誕55周年を記念して昨年4Kリマスターによるドルビーシネマ版が製作され、対応できる上映館での限定上映が行われました。個人的には「平成ガメラ三部作」の1作目にあたるこの作品だけ劇場で鑑賞したことが無かったのでようやく長年の希望が叶い感無量の映像体験を先日味わってきました。
1995年を舞台に2体の巨大怪獣とそれを発見した人々や自衛隊との戦いを描くこの映画、リアリティを重視して設定や世界観が構築され自衛隊の兵器などは現実に即したものが登場しています。同時期に年1本ペースで製作されていた「ゴジラ」シリーズにはメーサー車やスーパーXと言った架空の兵器が活躍しますがそれとは対照的となっています。
この映画の大きな特徴として「視点の低さ」が上げられます。怪獣を俯瞰するのではなく大半のカットは人間が怪獣を見上げる視点を貫いており、ガメラたちの巨大感だけでなくそれらが日常に入り込んできた「災害」あるいは「異物」であることを強調しています。
また、製作に当たり日本テレビとの協力を取り付けたこの映画は作中に登場するニュースのシーンを当時日本テレビの夕方のニュースを担当していた真山勇一、木村優子らがキャスターとしてニュースを読み上げていたり(収録は実際のニュース番組放送終了後にそのままスタジオとセットを利用して撮影されたそうです)、同じく日テレのアナウンサーだった大神いずみがリポーターとして出演したりしており現実の延長線上的感覚を醸成するのに一役買っています。
25年前の作品を高精細な4Kリマスターとした弊害というべきか、却って怪獣の作り物感や造形物の塗りムラみたいなものが目立ってしまったりするカットが散見されますが、今再見するならそういったシーンも味わい深いものに映るかもしれません。
むしろこの映画最大の欠点はヒロインの一人である草薙浅黄を演じる、これがデビュー作であった藤谷文子の演技でしょう。まだご覧になったことの無い方はこの1点だけはお覚悟の上でご覧になってください(笑)
興行成績では苦戦したものの作品としては高い評価を得たこの作品は、その後2本の続編が製作され三部作となり、監督金子修介、特撮監督樋口真嗣の出世作ともなりました。
また今回もこの「大怪獣空中決戦」の好評を受けて続編の「レギオン襲来」のドルビーシネマ版の上映が先日決定。せっかくだからこれも何とか時間を作って観に行きたいものよ。
愛知県下でも緊急事態宣言発令を受けてまたしても各所で営業時間が短縮に。これは飲食店だけではなく映画館も追従する形を取り、大手シネコンではレイトショー上映を取りやめて20時前後には終了に。ミニシアターの方も順次その流れに乗っていくようで、休日前の仕事上がりに何か観るというムーブをしばらく取れなくなりそうなのが辛い。ただでさえ飲食店の売り上げが落ちこんでるのにまだ逆風が吹くというのもきつい。
こんばんは、小島@監督です。
せめて観れる内は映画を観に行こう。
さて、今回の映画は「ワンダーウーマン1984」です。
1984年、アマゾン族の王女ダイアナ・プリンス(ガル・ガドット)はワンダーウーマンとして悪人退治を行う傍らで普段はスミソニアン博物館の学芸員として働いていた。
ある時、同じスミソニアン博物館の新任学芸員バーバラ・ミネルヴァ(クリステン・ウィグ)のもとに強盗事件の証拠品が鑑定のために送られてきた。その中にダイアナは奇妙にパワーを感じる石を見つけ、興味を示す。
同じころ、石油ベンチャーを率いるマックス・ロード(ペドロ・パスカル)が博物館に多額の寄付を申し出てくる。マックスはバーバラと意気投合するが、彼の狙いはその石「ドリーム・ストーン」にあった。
2019年の年末から2020年初頭にかけて公開されていたブロックバスター映画と言えば「スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け」を筆頭に「ジュマンジ ネクストレベル」「ターミネーター ニューフェイト」「ドクター・スリープ」などが上映され、そこに「アナと雪の女王2」「僕のヒーローアカデミア」と言ったアニメ映画も加わり非常に華々しいラインナップをしていました。わずか1年前の話ですがもう遠い昔のようです。その後軒並み集客力の強い大作や話題作は延期やプラットフォームを配信のみに移して中止となり、この年末年始に上映された大作と言える規模の作品と言えばロバート・ゼメキス監督アン・ハサウェイ主演の「魔女がいっぱい」とこの「ワンダーウーマン1984」のみという状況になってしまいました。今回の「ワンダーウーマン1984」、実は前作を未見のままに観に行ったのですがそれは取りも直さず「スケールの大きいハリウッドアクションが観たい」という欲求に応えてくれる作品がこの1本しかないからです。そしてこの映画は皮肉にもこの1年で起きた事、失われたものを思い起こさせる作品になっていました。
満員の観衆のもとでアマゾン族の競技会が行われ、幼いダイアナがそれに参加するシーンからこの映画は始まります。本来ならこの作品は昨年6月に公開される予定だったことを思えば開催直前であった東京オリンピックを想起させるある種の祝祭的なシーンでもあったことでしょう。
そして今作のヴィランとなるマックス、若い頃のドナルド・トランプ氏にとてもよく似せています。そりゃもうちょっと変な笑いが出るくらいに。本来の公開時期を思えば大統領選挙にぶつける気満々だったはずです。風刺なんて可愛いものではなくてこんなに露骨に嫌われる現職大統領はちょっと記憶にありません。しかし面白いのは作中のマックスは出身が貧困層の移民でありコンプレックスを押し隠すためにトランプ氏のようなスタイルにしていることが示唆されており、この辺りは元から富豪で白人で移民を敵視するトランプ氏とは対照的です。そんな彼が「ドリーム・ストーン」を手にしてある願いを叶えた事で世界は狂騒の渦に叩き込まれていき、そうとは知らずに自身の願いを叶えてしまったダイアナも自分の望みと世界の変容との狭間で苦しむことになるのです。
1984年という時代設定にも注目です。当時のレーガン大統領が推進した経済政策により景気が上昇していた時期であり、音楽ではシンディ・ローパーやマドンナが、映画ではスティーブン・スピルバーグやジェームズ・キャメロンらが台頭してヒット作を連発。ポップカルチャーが活況の様相を見せていました。政治に目を向ければ当時冷戦期の只中であり、レーガンの対ソ政策は核戦争の危機を煽ることに繋がるのではと懸念されてもいました。もう一つ付け加えるならば、この年レーガンは大統領として再選されますが、対抗馬として挙がった民主党のウォルター・モンデールは初めて副大統領候補に女性を擁立したことが注目されました。
終盤、世界は加速度的に悪化の一途をたどり混乱していきます。その様がつい先日発生したアメリカ連邦議会占拠事件と似ているのは皮肉以外の何物でもありません。奇しくも、というべきか良くも悪くもというべきか華やかな時代の中で生きて戦うダイアナの姿の向こうに1984年へのノスタルジーと2020~2021年への現代を通し見る事の出来る作品に仕上がっています。
深く考えずに観られるアメコミ映画でありながらある意味でこれほどに今日性の強い作品というのもなかなかに珍しいでしょう。「今でしか味わえない」感想を持たせてくれる作品です。鑑賞できる機会の作れる方は是非ご覧になってみてください。
こんばんは、小島@監督です。
せめて観れる内は映画を観に行こう。
さて、今回の映画は「ワンダーウーマン1984」です。
1984年、アマゾン族の王女ダイアナ・プリンス(ガル・ガドット)はワンダーウーマンとして悪人退治を行う傍らで普段はスミソニアン博物館の学芸員として働いていた。
ある時、同じスミソニアン博物館の新任学芸員バーバラ・ミネルヴァ(クリステン・ウィグ)のもとに強盗事件の証拠品が鑑定のために送られてきた。その中にダイアナは奇妙にパワーを感じる石を見つけ、興味を示す。
同じころ、石油ベンチャーを率いるマックス・ロード(ペドロ・パスカル)が博物館に多額の寄付を申し出てくる。マックスはバーバラと意気投合するが、彼の狙いはその石「ドリーム・ストーン」にあった。
2019年の年末から2020年初頭にかけて公開されていたブロックバスター映画と言えば「スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け」を筆頭に「ジュマンジ ネクストレベル」「ターミネーター ニューフェイト」「ドクター・スリープ」などが上映され、そこに「アナと雪の女王2」「僕のヒーローアカデミア」と言ったアニメ映画も加わり非常に華々しいラインナップをしていました。わずか1年前の話ですがもう遠い昔のようです。その後軒並み集客力の強い大作や話題作は延期やプラットフォームを配信のみに移して中止となり、この年末年始に上映された大作と言える規模の作品と言えばロバート・ゼメキス監督アン・ハサウェイ主演の「魔女がいっぱい」とこの「ワンダーウーマン1984」のみという状況になってしまいました。今回の「ワンダーウーマン1984」、実は前作を未見のままに観に行ったのですがそれは取りも直さず「スケールの大きいハリウッドアクションが観たい」という欲求に応えてくれる作品がこの1本しかないからです。そしてこの映画は皮肉にもこの1年で起きた事、失われたものを思い起こさせる作品になっていました。
満員の観衆のもとでアマゾン族の競技会が行われ、幼いダイアナがそれに参加するシーンからこの映画は始まります。本来ならこの作品は昨年6月に公開される予定だったことを思えば開催直前であった東京オリンピックを想起させるある種の祝祭的なシーンでもあったことでしょう。
そして今作のヴィランとなるマックス、若い頃のドナルド・トランプ氏にとてもよく似せています。そりゃもうちょっと変な笑いが出るくらいに。本来の公開時期を思えば大統領選挙にぶつける気満々だったはずです。風刺なんて可愛いものではなくてこんなに露骨に嫌われる現職大統領はちょっと記憶にありません。しかし面白いのは作中のマックスは出身が貧困層の移民でありコンプレックスを押し隠すためにトランプ氏のようなスタイルにしていることが示唆されており、この辺りは元から富豪で白人で移民を敵視するトランプ氏とは対照的です。そんな彼が「ドリーム・ストーン」を手にしてある願いを叶えた事で世界は狂騒の渦に叩き込まれていき、そうとは知らずに自身の願いを叶えてしまったダイアナも自分の望みと世界の変容との狭間で苦しむことになるのです。
1984年という時代設定にも注目です。当時のレーガン大統領が推進した経済政策により景気が上昇していた時期であり、音楽ではシンディ・ローパーやマドンナが、映画ではスティーブン・スピルバーグやジェームズ・キャメロンらが台頭してヒット作を連発。ポップカルチャーが活況の様相を見せていました。政治に目を向ければ当時冷戦期の只中であり、レーガンの対ソ政策は核戦争の危機を煽ることに繋がるのではと懸念されてもいました。もう一つ付け加えるならば、この年レーガンは大統領として再選されますが、対抗馬として挙がった民主党のウォルター・モンデールは初めて副大統領候補に女性を擁立したことが注目されました。
終盤、世界は加速度的に悪化の一途をたどり混乱していきます。その様がつい先日発生したアメリカ連邦議会占拠事件と似ているのは皮肉以外の何物でもありません。奇しくも、というべきか良くも悪くもというべきか華やかな時代の中で生きて戦うダイアナの姿の向こうに1984年へのノスタルジーと2020~2021年への現代を通し見る事の出来る作品に仕上がっています。
深く考えずに観られるアメコミ映画でありながらある意味でこれほどに今日性の強い作品というのもなかなかに珍しいでしょう。「今でしか味わえない」感想を持たせてくれる作品です。鑑賞できる機会の作れる方は是非ご覧になってみてください。
新型コロナの感染者数が加速度的になってきたり、北陸の方では大雪になっていたり、だいぶシャレにならない週末となったここ数日、皆さんはいかがでしたでしょうか?私は予定を一つ潰さざるを得なくなって結構しょんぼり。更には来月の予定も一つ潰れてげんなり。こういうご時世だから仕方ないのかもしれませんが。とは言え職業柄テレワークが難しいため余暇の予定は消えても普通に通勤しなきゃいけないのが何ともジレンマ。おのれ新型コロナ。
こんばんは、小島@監督です。
一日も早く気軽に遊びに出かけられる日々が戻ってほしいですのぅ。
さて、今回は映画ではなく久しぶりにライブの話。この土日に「アイドルマスター」今年最初のイベントである「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS Broadcast & LIVE Happy New Yell !!!」が開催されました。当初は配信に加えて観客を入れてのイベントとして告知されましたが昨今の状況を受けて無観客で配信のみの開催へと変更。それ故私も自宅での鑑賞です。家から一歩も出ないで観たライブのレポートをするのは何だか妙な気分。これも時代の流れか。
元々「シンデレラガールズ」のライブイベントと言えばアイマスシリーズの中でも絢爛豪華なショーアップで楽しませてくれるものが多く、それ故に今回はどう見せてくるかを注目していましたが配信のみとなった今回のイベントではAR技術をふんだんに使用した「ライブであると同時に映像コンテンツとしても強化する」という贅沢な方向で展開していました。
具体例を挙げるなら、Day2で披露された「義勇任侠花吹雪」では炎のエフェクトに加えて武家屋敷の門構えのようなビジュアルを舞台セットのように前面に出したり、あるいは他の曲でも多用されていた紙吹雪のエフェクトなど本来観客を入れて観るステージであるなら実際にセットや装置を用意して見せる効果をARを使ってCGで見せるのに注力しており、結果的に出演者の入れ替えをスムーズに行いながら派手な演出を楽曲単位で提供してみせる見事なステージを作り上げていました。
また楽曲の中にはDay1の「OTAHENアンセム」、Day2の「オタクisLOVE」ではARを使って観客の代わりに楽曲のコール部分を表示して画面を埋め尽くしてみたり(この2曲はステージでのパフォーマンスも大概騒がしかったが)、Day1の「世界滅亡 or KISS」ではステージに竜巻を起こしてみたりDay2の「弾丸サバイバー」ではガトリングガンが斉射されたりアパッチが飛んだりと実際のステージでは絶対にやれない(むしろやっちゃいけない)視覚効果を投入させるなどかなり自由自在。演出のセンス次第でライブでも多様なものを見せられると感じさせる、新鮮な映像体験でした。
一方でDay1の藤原肇役鈴木みのりさんの「あらかねの器」、Day2の喜多見柚役武田羅理沙多胡さんの「思い出じゃない今日を」(どちらも珠玉の名曲。「あらかねの器」は最近「鬼滅の刃」の劇中曲「竈門炭治郎のうた」でも注目される椎名豪作曲。「思い出じゃない今日を」の方は新曲で発売前のためリリースが待ち遠しい)ではこれらの演出を削ぎ落し、バックダンサーすらも排してソロでの歌唱のみで魅せきるなどライブとしての醍醐味はきっちりと残しているところはさすがの一言。「Yell」というライブタイトルにちなんで観る人を元気づけるような楽曲を多めに並べてくれたのも嬉しいですね。
ちょっと気になるのは、このライブは当初観客を入れて行う予定だったのですが、その際のレギュレーションが「コール禁止。着席のみ」。両日の攻撃的なセットリストを見てると実際に現地で観ていたら新手の拷問にしか思えなかったことでしょうか(笑)
ライブとしての同時性を前面に押し出しつつ映像コンテンツとしての側面も強化した今回のライブはこれからのライブの在り方の一つの道筋を見せたように思えます。エンターテインメント業界に逆風が吹き続ける昨今ですが、微かな、でも確かな光を感じさせるイベントでした。これ以上この業界が衰退されるのは辛いので今年もできる限り応援したいと思っています。
いつかまた、現地で熱狂できる日を願って。
こんばんは、小島@監督です。
一日も早く気軽に遊びに出かけられる日々が戻ってほしいですのぅ。
さて、今回は映画ではなく久しぶりにライブの話。この土日に「アイドルマスター」今年最初のイベントである「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS Broadcast & LIVE Happy New Yell !!!」が開催されました。当初は配信に加えて観客を入れてのイベントとして告知されましたが昨今の状況を受けて無観客で配信のみの開催へと変更。それ故私も自宅での鑑賞です。家から一歩も出ないで観たライブのレポートをするのは何だか妙な気分。これも時代の流れか。
元々「シンデレラガールズ」のライブイベントと言えばアイマスシリーズの中でも絢爛豪華なショーアップで楽しませてくれるものが多く、それ故に今回はどう見せてくるかを注目していましたが配信のみとなった今回のイベントではAR技術をふんだんに使用した「ライブであると同時に映像コンテンツとしても強化する」という贅沢な方向で展開していました。
具体例を挙げるなら、Day2で披露された「義勇任侠花吹雪」では炎のエフェクトに加えて武家屋敷の門構えのようなビジュアルを舞台セットのように前面に出したり、あるいは他の曲でも多用されていた紙吹雪のエフェクトなど本来観客を入れて観るステージであるなら実際にセットや装置を用意して見せる効果をARを使ってCGで見せるのに注力しており、結果的に出演者の入れ替えをスムーズに行いながら派手な演出を楽曲単位で提供してみせる見事なステージを作り上げていました。
また楽曲の中にはDay1の「OTAHENアンセム」、Day2の「オタクisLOVE」ではARを使って観客の代わりに楽曲のコール部分を表示して画面を埋め尽くしてみたり(この2曲はステージでのパフォーマンスも大概騒がしかったが)、Day1の「世界滅亡 or KISS」ではステージに竜巻を起こしてみたりDay2の「弾丸サバイバー」ではガトリングガンが斉射されたりアパッチが飛んだりと実際のステージでは絶対にやれない(むしろやっちゃいけない)視覚効果を投入させるなどかなり自由自在。演出のセンス次第でライブでも多様なものを見せられると感じさせる、新鮮な映像体験でした。
一方でDay1の藤原肇役鈴木みのりさんの「あらかねの器」、Day2の喜多見柚役武田羅理沙多胡さんの「思い出じゃない今日を」(どちらも珠玉の名曲。「あらかねの器」は最近「鬼滅の刃」の劇中曲「竈門炭治郎のうた」でも注目される椎名豪作曲。「思い出じゃない今日を」の方は新曲で発売前のためリリースが待ち遠しい)ではこれらの演出を削ぎ落し、バックダンサーすらも排してソロでの歌唱のみで魅せきるなどライブとしての醍醐味はきっちりと残しているところはさすがの一言。「Yell」というライブタイトルにちなんで観る人を元気づけるような楽曲を多めに並べてくれたのも嬉しいですね。
ちょっと気になるのは、このライブは当初観客を入れて行う予定だったのですが、その際のレギュレーションが「コール禁止。着席のみ」。両日の攻撃的なセットリストを見てると実際に現地で観ていたら新手の拷問にしか思えなかったことでしょうか(笑)
ライブとしての同時性を前面に押し出しつつ映像コンテンツとしての側面も強化した今回のライブはこれからのライブの在り方の一つの道筋を見せたように思えます。エンターテインメント業界に逆風が吹き続ける昨今ですが、微かな、でも確かな光を感じさせるイベントでした。これ以上この業界が衰退されるのは辛いので今年もできる限り応援したいと思っています。
いつかまた、現地で熱狂できる日を願って。
皆さん、明けましておめでとうございます。
本来なら昨日は毎年恒例の新年歌会の日だったのですが、今回は中止に。自分としてももう10年以上続く年始の予定の一つだったので残念でなりません。一日も早く再開できる時を祈っております。皆さんともお会いしたいですし、自分も思いっきり歌いたい。
こんばんは、小島@監督です。
首都圏ではまたしても緊急事態宣言が発令されそうな勢い。暗い話が多い年明けになってしまいましたが、今年もよろしくお願いします。
さて、2021年最初となる今回の映画は「ポケットモンスター ココ」です。
人里から離れたジャングル、その奥地に「オコヤの森」と呼ばれる場所があった。そこにはザルードと呼ばれる、強い力を持ちながら他のポケモンとも距離を置き厳しい掟と共に生きるポケモンたちが暮らしていた。
ある日、一体のザルード(声・中村勘九郎)が川辺で人間の赤ん坊を見つけた。どうにも見捨てることのできなかった彼は親を見つけ出せる時まで赤ん坊を育てるために掟を捨て、群から離れて生きることを決意する。赤ん坊はココ(声・上白石萌歌)と名付けられ、1体と1人の生活が始まる。
そして10年の歳月が流れた。森中のポケモンと心を通わせられるようになったココは、ある時ポケモンを探すために森へ踏み入った少年・サトシ(声・松本梨香)とその相棒であるポケモン・ピカチュウ(声・大谷育江)と出会う。
1998年の「ミュウツーの逆襲」から続く劇場版「ポケットモンスター」は長らくサマーシーズンの顔の一つでしたが今作はコロナ禍を受けてクリスマスから新年を飾る作品へと延期されました。7~8月頃には既に映画館の営業も再開されていたのでどちらかというとコロナ禍そのものよりも「ドラえもん」を始めとした3~4月期の作品が後ろ押しになったことや先の緊急事態宣言時に製作体制の見直しをする必要に迫られたことなどが主要因でしょう。
劇場版ポケモンは2017年の「キミにきめた!」以降TVシリーズからは距離を置いた作品が製作されていますが今作もその流れに沿った形となっています。物語を牽引するのはあくまでココとザルードの関係性でありサトシとピカチュウは言わば「導き手」として登場する形となっているのでこれまでの劇場版ポケモンと比較するとかなりの異色作なのではないでしょうか。
題材を見れば「ターザン」や「ジャングル・ブック」、古くは「狼少年ケン」などを思わせる構図で主旋律だけを観れば分かり易い物語でもあるのですが、なかなかに重層的な作品です。
ココとサトシが出会ったことがきっかけとなり、やがて人跡未踏であった「聖域」とも言うべき場所に人間を呼び寄せることになります。この時に起こるのは単純な自然(ポケモン)対人間だけではない点がポイントです。人間の飽くなき欲望に立ち向かおうとするザルードたちもまた自らの力を頼みに他のポケモンたちと距離を置き、また種族の掟にも縛られている。その狭間で足掻くココと父ちゃんザルードがいる、という非常に複雑な感情の交錯が展開し物語にダイナミックなうねりを生んでいます。
またこの物語を彩る音楽にも注目です。世界市場を最初から見通しているからか毎回スケールの大きな編成でBGMを聴かせるシリーズではありますが、今作ではそれらに加え岡崎体育の手によるヴォーカル曲(必ずしも作中のキャラクターが歌うわけではないのでミュージカルではない)が使われており、これが見事に片っ端からハマっています。全般的に映像のキレも良く、エモーショナルな物語と音楽が相乗効果をもたらしていくつかのシーンで私、うっかりマジ涙。
実のところメインターゲットであろう子供たちより世の大人たち、特にお父さんを本気で泣かせにかかってるようなところが強い作品ですが、それが鼻につき過ぎない所で留まっているバランス感覚も含めてかなり高水準の作品であると言えるでしょう。
正直期待を軽く超える満足度の高さに驚いています。予告編などで興味のある方は是非映画館に足を運んでみて頂きたいですね。
本来なら昨日は毎年恒例の新年歌会の日だったのですが、今回は中止に。自分としてももう10年以上続く年始の予定の一つだったので残念でなりません。一日も早く再開できる時を祈っております。皆さんともお会いしたいですし、自分も思いっきり歌いたい。
こんばんは、小島@監督です。
首都圏ではまたしても緊急事態宣言が発令されそうな勢い。暗い話が多い年明けになってしまいましたが、今年もよろしくお願いします。
さて、2021年最初となる今回の映画は「ポケットモンスター ココ」です。
人里から離れたジャングル、その奥地に「オコヤの森」と呼ばれる場所があった。そこにはザルードと呼ばれる、強い力を持ちながら他のポケモンとも距離を置き厳しい掟と共に生きるポケモンたちが暮らしていた。
ある日、一体のザルード(声・中村勘九郎)が川辺で人間の赤ん坊を見つけた。どうにも見捨てることのできなかった彼は親を見つけ出せる時まで赤ん坊を育てるために掟を捨て、群から離れて生きることを決意する。赤ん坊はココ(声・上白石萌歌)と名付けられ、1体と1人の生活が始まる。
そして10年の歳月が流れた。森中のポケモンと心を通わせられるようになったココは、ある時ポケモンを探すために森へ踏み入った少年・サトシ(声・松本梨香)とその相棒であるポケモン・ピカチュウ(声・大谷育江)と出会う。
1998年の「ミュウツーの逆襲」から続く劇場版「ポケットモンスター」は長らくサマーシーズンの顔の一つでしたが今作はコロナ禍を受けてクリスマスから新年を飾る作品へと延期されました。7~8月頃には既に映画館の営業も再開されていたのでどちらかというとコロナ禍そのものよりも「ドラえもん」を始めとした3~4月期の作品が後ろ押しになったことや先の緊急事態宣言時に製作体制の見直しをする必要に迫られたことなどが主要因でしょう。
劇場版ポケモンは2017年の「キミにきめた!」以降TVシリーズからは距離を置いた作品が製作されていますが今作もその流れに沿った形となっています。物語を牽引するのはあくまでココとザルードの関係性でありサトシとピカチュウは言わば「導き手」として登場する形となっているのでこれまでの劇場版ポケモンと比較するとかなりの異色作なのではないでしょうか。
題材を見れば「ターザン」や「ジャングル・ブック」、古くは「狼少年ケン」などを思わせる構図で主旋律だけを観れば分かり易い物語でもあるのですが、なかなかに重層的な作品です。
ココとサトシが出会ったことがきっかけとなり、やがて人跡未踏であった「聖域」とも言うべき場所に人間を呼び寄せることになります。この時に起こるのは単純な自然(ポケモン)対人間だけではない点がポイントです。人間の飽くなき欲望に立ち向かおうとするザルードたちもまた自らの力を頼みに他のポケモンたちと距離を置き、また種族の掟にも縛られている。その狭間で足掻くココと父ちゃんザルードがいる、という非常に複雑な感情の交錯が展開し物語にダイナミックなうねりを生んでいます。
またこの物語を彩る音楽にも注目です。世界市場を最初から見通しているからか毎回スケールの大きな編成でBGMを聴かせるシリーズではありますが、今作ではそれらに加え岡崎体育の手によるヴォーカル曲(必ずしも作中のキャラクターが歌うわけではないのでミュージカルではない)が使われており、これが見事に片っ端からハマっています。全般的に映像のキレも良く、エモーショナルな物語と音楽が相乗効果をもたらしていくつかのシーンで私、うっかりマジ涙。
実のところメインターゲットであろう子供たちより世の大人たち、特にお父さんを本気で泣かせにかかってるようなところが強い作品ですが、それが鼻につき過ぎない所で留まっているバランス感覚も含めてかなり高水準の作品であると言えるでしょう。
正直期待を軽く超える満足度の高さに驚いています。予告編などで興味のある方は是非映画館に足を運んでみて頂きたいですね。
クリスマス前後の2週間ほどは本来なら1年で最も忙しい時期で、むしろそうであるのが普通だったので、この時期にほとんど残業もせずに帰宅できてしまう今年は異常と言って良く、却って不安しか湧かない状況です。
来年はもう少しマシになっていると良いなぁ。
こんばんは、小島@監督です。
皆さんのこの1年はいかがでしたか?
さて、2020年最後の更新となる今回は毎年恒例の「今年の5本」と題して今年鑑賞した映画を振り返ります。例年同様今日現在の鑑賞可能状況も合わせて記載します。年末年始のご参考になれば幸いです。
1.ヴァイオレット・エヴァーガーデン
色々迷いましたが1本だけを選ぶなら今年はこれです。人と人を繋ぐ物語であり、また大きな悲劇からの復活の叫びでもあるこの映画が持つパワーはコロナ禍で否が応でも人との距離を考えさせられた人々の哀しみや苦しさをすくい上げてくれるでしょう。「鬼滅の刃」の後塵を拝す形にはなっているものの、根強い支持を受けて現在も上映が続いています。
2.ブレッドウィナー
タリバン政権下のアフガンで家族を救うため髪を切り少年として生きる少女の苦闘を描くアニメ。少女の勇気と知恵が熱い感動と長い余韻を呼ぶ1本です。近年は海外の秀作も多数上映されるようになってきました。Blu-ray/DVD発売中。また現在も各地のミニシアターなどで断続的に上映が続けられています。
3.海辺の映画館 キネマの玉手箱
今年4月に没した巨匠・大林宣彦監督の遺作となったこの映画は、戦争への絶対的な怒りと映画への絶対的な愛情に満ちた激情ほとばしる、そして自由過ぎる1本。現在も各地のミニシアターなどで断続的に上映が続いています。Blu-rayなどのリリース予定は現在のところ未定の模様。
4.彼らは生きていた
第1次大戦の記録映像を「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督の指揮のもと丹念に復元&カラー化。そこに当時の復員軍人たちのインタビュー音声を重ね、100年前に生きた彼らを身近に感じさせるドキュメンタリー映画の秀作。ミニシアターなどで断続的に上映が行われていますが、今年1月に封切られているもののソフト化はまだ未定の模様。
5.ランボー ラスト・ブラッド
傷つき失い続けた孤独の戦士ランボーの最後の戦いを激しいバイオレンス描写を以て描き出すシリーズの完結編。スタローンが辿り着いた境地を見届けろ。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。
今年はこんなチョイスにしてみました。世相を反映してか、割と重い作品が多かった印象です。次はそれ以外に印象に残った映画をいくつか。こちらは鑑賞順に列記していきます。
・男はつらいよ お帰り寅さん
渥美清没後25年を経て作られた、昭和を代表するキャラクターへの別れの歌。50年という時間の流れが作品に唯一無二の味を与えている。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。
・フォードVSフェラーリ
ル・マン24時間レースを戦う男たちの姿を描く。マット・デイモンとクリスチャン・ベール、名優二人の競演も熱い。あと自分の鑑賞履歴を振り返っていてこれが今年封切りの映画だったことに軽い衝撃を受けた。もう遠い昔のようだ(苦笑)。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。
・1917 命をかけた伝令
「彼らは生きていた」と同様第1次大戦を舞台に、ある伝令が前線を駆け抜ける姿を疑似ワンカットで描き出す。強烈な緊迫感が堪らない。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。また今ならAmazonプライムで見放題作品の中にラインナップされています。
・ミッドサマー
白夜の北欧で目も眩むような惨劇が展開する異色のスリラー。画面のエグさは今年随一である。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。
・悪人伝
ヤクザの親分と暴力刑事がコンビを組んで連続殺人鬼に挑む!主演マ・ドンソクの圧倒的存在感炸裂の韓国ノワール。Blu-ray/DVD発売中。
・ごん gon the little fox
新美南吉の名作「ごんぎつね」を木彫りのような素朴な造形のパペットを用いて撮影されたストップモーション・アニメ。短編ながら丁寧な空気感とディスコミュニケーションの寂寥感の描出が見事。各地のミニシアターやプラネタリウムなどで上映が続いています。ソフト化は今のところ未定の模様。
・事故物件 恐い間取り
TVの企画で事故物件で生活することになった芸人が見舞われる恐怖を描くホラー。亀梨和也が売れない芸人を好演。映画としてはイマイチも良いところなのですが妙にツボにはまりました(笑)。一部劇場で現在も上映中。Blu-ray/DVDは2021年2月10日発売予定。
・TENET テネット
時間を逆行する者と陰謀を巡りエージェントの戦いが始まる。今年は本当に大作が少なかった。そんな中で果敢に上映を実行してくれたクリストファー・ノーランに感謝。大作にしか作り得ない映像世界は確かにある。デジタル配信版発売中。Blu-ray/DVDは2021年1月8日発売予定。
・星の子
一人の少女の心の揺れと成長を繊細に描くドラマ。主演芦田愛菜の演技が圧巻。現在上映中。
・鬼滅の刃 無限列車編
もう説明要らないっすね!とうとう興行収入歴代1位に躍り出ましたね!
・ウルフウォーカー
ケルトの伝承を題材に人と精霊の交流を描くアニメーション。製作は「ブレッドウィナー」と同じくアイルランドのアニメスタジオ・カートゥーン・サルーン。現在上映中。
・羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来
中国発のアニメ映画。王道かつ正統派なエンターテインメント。可愛いキャラクターとアクション描写に日本アニメの影響が随所に見て取れる。現在上映中。「ウルフウォーカー」と共にアニメーションの新しい潮流を感じ取れる作品だ。
今年は洋邦問わず非常にアニメ映画が豊作だった印象です。この流れは来年も続いてほしいな。
最後に、今年鑑賞した旧作を列記していきます。今年はコロナ禍の影響を受けて新作が相次いで延期・中止となった反動でこれまでになく旧作が再上映されました。企画上映などで例年ある程度は観ていますがこれほど旧作をスクリーン鑑賞した年はありません。それはとりもなおさず映画館や配給会社の苦闘の表れとも言えるでしょう。「今年の」という趣旨からは離れますが、これら全てが今年のコロナ禍の産物でもあり、今回は敢えて記載することにします。こちらは製作年代順に列記していきます。既にほぼ全てソフト化されているので製作年と監督・主演のみ表記します。
・シェーン(1953年・監督ジョージ・スティーヴンス、主演アラン・ラッド)
・真夏の夜のジャズ(1960年・監督バート・スターン)
・死霊の盆踊り(1965年・監督A・C・スティーヴン、主演クリズウェル)
・ひまわり(1970年・監督ヴィットリオ・デ・シーカ、主演ソフィア・ローレン)
・ウィッカーマン(1973年・監督ロビン・ハーディ、主演エドワード・ウッドワード)
・金田一耕助の冒険(1979年・監督大林宣彦、主演古谷一行)
・風の谷のナウシカ(1984年・監督宮崎駿、主演島本須美)
・バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年・監督ロバート・ゼメキス、主演マイケル・J・フォックス)
・AKIRA(1988年・監督大友克洋、主演岩田光央)
・機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(1988年・監督富野由悠季、主演古谷徹)
・バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3(1990年・監督ロバート・ゼメキス、主演マイケル・J・フォックス)
・トータル・リコール(1990年・監督ポール・バーホーベン、主演アーノルド・シュワルツェネッガー)
・プロメア(2019年・監督今石洋之、主演松山ケンイチ)
・ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝 永遠と自動手記人形(2019年・監督藤田春香、主演石川由依)
書き出してみて気づきましたがだいぶ満遍なく観ているつもりだったけど2000年代だけ無かった。惜しい(笑)。
来年はどんな映画に出会えるのでしょう。そして映画にも世の中にも明るい話題が出てきますように。
来年はもう少しマシになっていると良いなぁ。
こんばんは、小島@監督です。
皆さんのこの1年はいかがでしたか?
さて、2020年最後の更新となる今回は毎年恒例の「今年の5本」と題して今年鑑賞した映画を振り返ります。例年同様今日現在の鑑賞可能状況も合わせて記載します。年末年始のご参考になれば幸いです。
1.ヴァイオレット・エヴァーガーデン
色々迷いましたが1本だけを選ぶなら今年はこれです。人と人を繋ぐ物語であり、また大きな悲劇からの復活の叫びでもあるこの映画が持つパワーはコロナ禍で否が応でも人との距離を考えさせられた人々の哀しみや苦しさをすくい上げてくれるでしょう。「鬼滅の刃」の後塵を拝す形にはなっているものの、根強い支持を受けて現在も上映が続いています。
2.ブレッドウィナー
タリバン政権下のアフガンで家族を救うため髪を切り少年として生きる少女の苦闘を描くアニメ。少女の勇気と知恵が熱い感動と長い余韻を呼ぶ1本です。近年は海外の秀作も多数上映されるようになってきました。Blu-ray/DVD発売中。また現在も各地のミニシアターなどで断続的に上映が続けられています。
3.海辺の映画館 キネマの玉手箱
今年4月に没した巨匠・大林宣彦監督の遺作となったこの映画は、戦争への絶対的な怒りと映画への絶対的な愛情に満ちた激情ほとばしる、そして自由過ぎる1本。現在も各地のミニシアターなどで断続的に上映が続いています。Blu-rayなどのリリース予定は現在のところ未定の模様。
4.彼らは生きていた
第1次大戦の記録映像を「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督の指揮のもと丹念に復元&カラー化。そこに当時の復員軍人たちのインタビュー音声を重ね、100年前に生きた彼らを身近に感じさせるドキュメンタリー映画の秀作。ミニシアターなどで断続的に上映が行われていますが、今年1月に封切られているもののソフト化はまだ未定の模様。
5.ランボー ラスト・ブラッド
傷つき失い続けた孤独の戦士ランボーの最後の戦いを激しいバイオレンス描写を以て描き出すシリーズの完結編。スタローンが辿り着いた境地を見届けろ。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。
今年はこんなチョイスにしてみました。世相を反映してか、割と重い作品が多かった印象です。次はそれ以外に印象に残った映画をいくつか。こちらは鑑賞順に列記していきます。
・男はつらいよ お帰り寅さん
渥美清没後25年を経て作られた、昭和を代表するキャラクターへの別れの歌。50年という時間の流れが作品に唯一無二の味を与えている。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。
・フォードVSフェラーリ
ル・マン24時間レースを戦う男たちの姿を描く。マット・デイモンとクリスチャン・ベール、名優二人の競演も熱い。あと自分の鑑賞履歴を振り返っていてこれが今年封切りの映画だったことに軽い衝撃を受けた。もう遠い昔のようだ(苦笑)。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。
・1917 命をかけた伝令
「彼らは生きていた」と同様第1次大戦を舞台に、ある伝令が前線を駆け抜ける姿を疑似ワンカットで描き出す。強烈な緊迫感が堪らない。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。また今ならAmazonプライムで見放題作品の中にラインナップされています。
・ミッドサマー
白夜の北欧で目も眩むような惨劇が展開する異色のスリラー。画面のエグさは今年随一である。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。
・悪人伝
ヤクザの親分と暴力刑事がコンビを組んで連続殺人鬼に挑む!主演マ・ドンソクの圧倒的存在感炸裂の韓国ノワール。Blu-ray/DVD発売中。
・ごん gon the little fox
新美南吉の名作「ごんぎつね」を木彫りのような素朴な造形のパペットを用いて撮影されたストップモーション・アニメ。短編ながら丁寧な空気感とディスコミュニケーションの寂寥感の描出が見事。各地のミニシアターやプラネタリウムなどで上映が続いています。ソフト化は今のところ未定の模様。
・事故物件 恐い間取り
TVの企画で事故物件で生活することになった芸人が見舞われる恐怖を描くホラー。亀梨和也が売れない芸人を好演。映画としてはイマイチも良いところなのですが妙にツボにはまりました(笑)。一部劇場で現在も上映中。Blu-ray/DVDは2021年2月10日発売予定。
・TENET テネット
時間を逆行する者と陰謀を巡りエージェントの戦いが始まる。今年は本当に大作が少なかった。そんな中で果敢に上映を実行してくれたクリストファー・ノーランに感謝。大作にしか作り得ない映像世界は確かにある。デジタル配信版発売中。Blu-ray/DVDは2021年1月8日発売予定。
・星の子
一人の少女の心の揺れと成長を繊細に描くドラマ。主演芦田愛菜の演技が圧巻。現在上映中。
・鬼滅の刃 無限列車編
もう説明要らないっすね!とうとう興行収入歴代1位に躍り出ましたね!
・ウルフウォーカー
ケルトの伝承を題材に人と精霊の交流を描くアニメーション。製作は「ブレッドウィナー」と同じくアイルランドのアニメスタジオ・カートゥーン・サルーン。現在上映中。
・羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来
中国発のアニメ映画。王道かつ正統派なエンターテインメント。可愛いキャラクターとアクション描写に日本アニメの影響が随所に見て取れる。現在上映中。「ウルフウォーカー」と共にアニメーションの新しい潮流を感じ取れる作品だ。
今年は洋邦問わず非常にアニメ映画が豊作だった印象です。この流れは来年も続いてほしいな。
最後に、今年鑑賞した旧作を列記していきます。今年はコロナ禍の影響を受けて新作が相次いで延期・中止となった反動でこれまでになく旧作が再上映されました。企画上映などで例年ある程度は観ていますがこれほど旧作をスクリーン鑑賞した年はありません。それはとりもなおさず映画館や配給会社の苦闘の表れとも言えるでしょう。「今年の」という趣旨からは離れますが、これら全てが今年のコロナ禍の産物でもあり、今回は敢えて記載することにします。こちらは製作年代順に列記していきます。既にほぼ全てソフト化されているので製作年と監督・主演のみ表記します。
・シェーン(1953年・監督ジョージ・スティーヴンス、主演アラン・ラッド)
・真夏の夜のジャズ(1960年・監督バート・スターン)
・死霊の盆踊り(1965年・監督A・C・スティーヴン、主演クリズウェル)
・ひまわり(1970年・監督ヴィットリオ・デ・シーカ、主演ソフィア・ローレン)
・ウィッカーマン(1973年・監督ロビン・ハーディ、主演エドワード・ウッドワード)
・金田一耕助の冒険(1979年・監督大林宣彦、主演古谷一行)
・風の谷のナウシカ(1984年・監督宮崎駿、主演島本須美)
・バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年・監督ロバート・ゼメキス、主演マイケル・J・フォックス)
・AKIRA(1988年・監督大友克洋、主演岩田光央)
・機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(1988年・監督富野由悠季、主演古谷徹)
・バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3(1990年・監督ロバート・ゼメキス、主演マイケル・J・フォックス)
・トータル・リコール(1990年・監督ポール・バーホーベン、主演アーノルド・シュワルツェネッガー)
・プロメア(2019年・監督今石洋之、主演松山ケンイチ)
・ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝 永遠と自動手記人形(2019年・監督藤田春香、主演石川由依)
書き出してみて気づきましたがだいぶ満遍なく観ているつもりだったけど2000年代だけ無かった。惜しい(笑)。
来年はどんな映画に出会えるのでしょう。そして映画にも世の中にも明るい話題が出てきますように。
「鬼滅の刃」の興行収入が300億に到達し、いよいよ歴代興収のトップに躍り出ようかという折に今夏リバイバル上映された「千と千尋の神隠し」が約9億数字を伸ばして引き離したと先日報じられました。そうは言っても今の勢いならいずれ追い抜くことにはなるのでしょう。しかしながら公開から約20年の時を経てもそれだけの数字を叩き出せる「千と千尋の神隠し」にはやはり化け物じみたパワーを感じざるを得ません。
2001年、スピルバーグの「A.I.」や「ハリー・ポッターと賢者の石」などがひしめく中で巨匠と呼ばれるまでになった宮崎駿が手掛け、配給である東宝が本気で勝ちに行った1本である「千と千尋と神隠し」と、今年映画館が休業を余儀なくされそれがようやく明けたとは言え国内外のメジャー作品が次々と延期や上映中止になり「これが当たらなければ映画産業そのものが死にかねない」苦境の中で起死回生の期待を背負った「鬼滅の刃」、取り巻く世情は違えどその時頂点にいたのが共にアニメであるという意味こそ大きいでしょう。
こんばんは、小島@監督です。
「鬼滅の刃 無限列車編」も10年後20年後にある種のノスタルジーと共に再発見される作品であるといいですね。
さて、今回の映画は「新解釈・三國志」です。
漢王朝後期から三国時代を描いた歴史書「三國志」に歴史学者・蘇我宗光(西田敏行)が新説を発表した。彼は乱世の英雄たちにこれまでとは違う人物像を見出していた。
酒を飲んで酔っている時だけ大言壮語を吐くが基本的に戦嫌いでやる気がない劉備玄徳(大泉洋)は、酔った時の一言がきっかけで関羽雲長(橋本さとし)、張飛翼徳(高橋努)と義兄弟の契りを交わし黄巾党の反乱を鎮圧すべく出兵する羽目になってしまうが。
近年は映画だけでなくドラマや舞台にと間断なく作品を発表し続けている印象のある福田雄一の、今年だけでも3本目となる映画は三國志を題材にしつつ、自分のフィールドに引き寄せて自由闊達なコメディーを繰り広げる1本です。「銀魂」や「今日から俺は!」などコミック原作の実写化が多い福田雄一監督ですが、そのフィルモグラフィーを観ればムロツヨシを主演に迎え日本史上名高い人物たちでコメディーを展開した「新解釈・日本史」や落語の「芝浜」を現代のホストクラブを舞台に翻案した「明烏」など古典に対しても果敢に挑戦した作品が見受けられます。というか発表した作品が少ないだけで古典や歴史は実は題材としては割と当人の好みなんじゃないでしょうか。
主演は意外にもこれが福田監督作品には初出演となる大泉洋。監督の要望に見事に応え、ひたすらぼやきまくるゆるい劉備玄徳を好演。ムロツヨシや佐藤二朗、小栗旬、山田孝之と言った福田作品の常連とのアンサンブルも楽しい作品になっています。特に福田雄一作品には欠かせないムロツヨシとの掛け合いが絶品。これは今後別の作品でもう一度実現してほしいくらいです。
一方で欠点も厳然として大きくあり、これが福田作品を初めて観る、という方ならばともかく「勇者ヨシヒコ」などで見慣れた方にとっては「期待通り」ではあっても「期待以上」にはならない点です。出演陣の豪華さこそ目が眩みますが全体的にテンポが平板でTV的な楽しみ方が主軸になってしまっているので「映画」としてもう一つ突き抜けた何かが欲しかったような気がします。
とはいえ年末の忙しない時期に観るならこれくらいライトな方が丁度いいかもしれません。一時肩の力を抜いてノー天気に行くのが多分一番のスタンスです。ご興味のある方は、どうぞ何も考えずに映画館に行きましょう(笑)
2001年、スピルバーグの「A.I.」や「ハリー・ポッターと賢者の石」などがひしめく中で巨匠と呼ばれるまでになった宮崎駿が手掛け、配給である東宝が本気で勝ちに行った1本である「千と千尋と神隠し」と、今年映画館が休業を余儀なくされそれがようやく明けたとは言え国内外のメジャー作品が次々と延期や上映中止になり「これが当たらなければ映画産業そのものが死にかねない」苦境の中で起死回生の期待を背負った「鬼滅の刃」、取り巻く世情は違えどその時頂点にいたのが共にアニメであるという意味こそ大きいでしょう。
こんばんは、小島@監督です。
「鬼滅の刃 無限列車編」も10年後20年後にある種のノスタルジーと共に再発見される作品であるといいですね。
さて、今回の映画は「新解釈・三國志」です。
漢王朝後期から三国時代を描いた歴史書「三國志」に歴史学者・蘇我宗光(西田敏行)が新説を発表した。彼は乱世の英雄たちにこれまでとは違う人物像を見出していた。
酒を飲んで酔っている時だけ大言壮語を吐くが基本的に戦嫌いでやる気がない劉備玄徳(大泉洋)は、酔った時の一言がきっかけで関羽雲長(橋本さとし)、張飛翼徳(高橋努)と義兄弟の契りを交わし黄巾党の反乱を鎮圧すべく出兵する羽目になってしまうが。
近年は映画だけでなくドラマや舞台にと間断なく作品を発表し続けている印象のある福田雄一の、今年だけでも3本目となる映画は三國志を題材にしつつ、自分のフィールドに引き寄せて自由闊達なコメディーを繰り広げる1本です。「銀魂」や「今日から俺は!」などコミック原作の実写化が多い福田雄一監督ですが、そのフィルモグラフィーを観ればムロツヨシを主演に迎え日本史上名高い人物たちでコメディーを展開した「新解釈・日本史」や落語の「芝浜」を現代のホストクラブを舞台に翻案した「明烏」など古典に対しても果敢に挑戦した作品が見受けられます。というか発表した作品が少ないだけで古典や歴史は実は題材としては割と当人の好みなんじゃないでしょうか。
主演は意外にもこれが福田監督作品には初出演となる大泉洋。監督の要望に見事に応え、ひたすらぼやきまくるゆるい劉備玄徳を好演。ムロツヨシや佐藤二朗、小栗旬、山田孝之と言った福田作品の常連とのアンサンブルも楽しい作品になっています。特に福田雄一作品には欠かせないムロツヨシとの掛け合いが絶品。これは今後別の作品でもう一度実現してほしいくらいです。
一方で欠点も厳然として大きくあり、これが福田作品を初めて観る、という方ならばともかく「勇者ヨシヒコ」などで見慣れた方にとっては「期待通り」ではあっても「期待以上」にはならない点です。出演陣の豪華さこそ目が眩みますが全体的にテンポが平板でTV的な楽しみ方が主軸になってしまっているので「映画」としてもう一つ突き抜けた何かが欲しかったような気がします。
とはいえ年末の忙しない時期に観るならこれくらいライトな方が丁度いいかもしれません。一時肩の力を抜いてノー天気に行くのが多分一番のスタンスです。ご興味のある方は、どうぞ何も考えずに映画館に行きましょう(笑)